らくとん倶楽部
ラクトンC10(γ-デカラクトン)とラクトンC11(γ-ウンデカラクトン)の香りに魅了された日々の備忘録

社交不安症・社会不安障害(SAD)を克服・完治させた1年間の道のり

社交不安症・社会不安障害(SAD)を克服・完治させた1年間の道のり

社交不安症、英語でSAD(Social Anxiety Disorder)という精神疾患があります。かつては「対人恐怖症」「社会不安障害」「社交不安障害」とも呼ばれ、人の目に晒されるほとんどの全ての行為において過度の緊張をしてしまう事で、ついにはそのような状況を自ら避けるようになり、仕事や日常生活に支障をきたすようになる精神疾患・障害です。

私の場合は、2011年に発症し、2017年に確定診断を受けたのち、薬物投与や読書療法、運動療法などを経て約1年間で克服する事ができました。ほぼ完治と言っても良いのではないでしょうか。「障害」というからには「一生このまま治らないかも?」と思っていましたが、適切な治療と行動によって、わずか1年という短い治療期間で社交不安症を克服、そして社会復帰を果たすことが出来ました。

ここではその1年間の道のりを詳細に紹介します。同じ様に社交不安症で悩んでいる多くの患者さんたちに、このように改善に向かったケースもあるんだよという事を知ってもらい、皆さんにとって少しでもヒントになれば幸いです。少し長いですがお付き合い下さい。

社交不安症とは?症状と原因

かつては「対人恐怖症」や「社会不安障害」と呼称されていたこともありますが、2008年に日本精神神経学科において「社交不安障害」に名称が変更され、さらに2014年にDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引)の翻訳にあたり「社交不安症」に名称変更されました。

症状

人前でプレゼンテーションや発表したりするとき、誰でも少なからず緊張するものです。その緊張の度合いが酷いとき、「あがり症」と言ってみたり「シャイ」「緊張しぃ」と言ってみたりします。社交不安症の人もそんな単なる「あがり症」の一つと思われがちですが、2つの意味で異なっています。ひとつ目は明らかに緊張の度合いが異なる事です。手や足、頭、首など体中が震え、赤面し、手にびっしょり汗をかく場合もあります。声は震えて出なくなり、喋ることもできません。もはやパニック状態です。緊張感や不安感を通り越して恐怖感すら感じます。

スピーチ恐怖
スピーチや会議など人前で話すと緊張する
赤面恐怖・発汗恐怖
緊張から顔が赤くなったり、汗をかいたりする
振戦恐怖
緊張して手などが震える

この辺はまだ序の口。以下のような事でも過度に緊張して恐怖感を覚えてしまいます。

対人緊張
人と接すると緊張する
視線恐怖
他者の視線を感じると緊張する
会食恐怖
人前で食事したり、パーティのような場で緊張する
書痙
人前で字を書くと緊張して手が震える
電話恐怖
電話で話すと緊張する
腹鳴恐怖
自分のお腹が鳴ってしまう事が恥ずかしく極度に恐れる
排尿・排便恐怖
公共のトイレで用を足すことに緊張する

本人は「なぜこんなシーンで自分は緊張しているんだろう」と不可解で仕方ありません。

社交不安症が「あがり症」と異なる点のふたつ目として、あまりに不安感・恐怖心を抱くあまりに、これらのシーン(スピーチ・人と接する・人前で食事・人前で字を書く・電話・公衆トイレの利用)を回避するようになることです。こうなるともはや正常な生活を送る事が難しくなってきます。

M.I.N.I.(Mini-International Neuropsychiatric Interview:簡易構造化面接法)という社交不安症を診断するための4つのチェック項目があります。これら全てに当てはまると社交不安症の疑い濃厚と言えます。

  1. 人から見られたり、注目を浴びたりすることに不安や恐怖を感じる
  2. その不安や恐怖は、自分でも過剰であり不合理だと思う
  3. その状況に対し、避けたり我慢したりしなければならないほどの恐怖を感じる
  4. その恐怖により著しい苦痛を感じ、日常生活に支障をきたしている

社交不安症に特徴的なのは2~4項目です。これはおかしいと思いながらもなぜか緊張してしまう。そしてそれを避けるようになり、最終的には何もできなくなってしまうのが社交不安症の典型的パターンです。

原因

原因は現在のところ不明です。大脳の中心部にある扁桃体と海馬に関連があり、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで中枢神経系がうまく機能しなくなって発症するらしい事まではわかっていますが、詳しい事まではまだわかっていません。

ちなみに親からの遺伝的要素はほとんど無いとされています。

社交不安症の有名人・芸能人

社交不安症の年間有病率は0.8%という調査もあり、それほど珍しい病気ではありません。人前に出る事を極度に恐れる割には、人前に出るのが仕事の有名人や芸能人にもこの社交不安症を抱えている人もいます。といっても社交不安症は「治らない障害」ではなく「治る病気」ですから、今活躍されている人は、なんとか山場を乗り切って、病気を治していった人達なのかもしれません。

財界人

  • (株)ニトリ社長 似鳥昭雄
    社交不安症にかかると何もできない自分に「この先人生真っ暗」と沈み込むこむものですが、(株)ニトリの社長である似鳥昭雄氏の成功事例は日本中の社交不安症患者に勇気と希望をもたらしてくれることでしょう。

芸能人

  • 中川翔子
    中学校時代のイジメをきっかけに社交不安症を発症したそうです。今は回復して多方面に活躍されています。
  • 黒沢かずこ(森三中)
    極度の視線恐怖症とのこと。イッテQなどでの活躍を見ると全くわからないものですね。
  • 吉田照美
    最近あまり見かけませんが一時は吉田照美をテレビで見ない日は無いと言われたほど活躍していました。吉田さんが社交不安症だったとはにわかには信じられませんが、早稲田大学在学中に社交不安症を克服するためにわざわざ「アナウンス研究会」というサークルに入ったそうです。

社交不安症の診断基準・チェックシート

社交不安症は先に記載したM.I.N.I.(Mini-International Neuropsychiatric Interview:簡易構造化面接法)の4つのチェック項目が全て当てはまるかどうかを診断基準とし、その重症度は24項目のLSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale:リーボビッツ社交不安症評価尺度)で判断します。

M.I.N.I.(Mini-International Neuropsychiatric Interview:簡易構造化面接法)

  1. 人から見られたり、注目を浴びたりすることに不安や恐怖を感じる
  2. その不安や恐怖は、自分でも過剰であり不合理だと思う
  3. その状況に対し、避けたり我慢したりしなければならないほどの恐怖を感じる
  4. その恐怖により著しい苦痛を感じ、日常生活に支障をきたしている

LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale:リーボビッツ社交不安症評価尺度)

  1. 人前で電話をかける
  2. 少人数のグループ活動に参加する
  3. 公共の場所で食事をする
  4. 人と一緒に公共の場所でお酒を飲む
  5. 権威ある人と話をする
  6. 観衆の前で何か行為をしたり話をする
  7. パーティーに行く
  8. 人に姿を見られながら仕事(勉強)をする
  9. 人に見られながら字を書く
  10. あまりよく知らない人に電話をする
  11. あまりよく知らない人たちと話し合う
  12. 全く初対面の人と会う
  13. 公衆トイレで用を足す
  14. 他の人たちが着席して待っている部屋に入っていく
  15. 人々の注目を浴びる
  16. 会議で意見を言う
  17. 試験を受ける
  18. あまりよく知らない人に不賛成であると言う
  19. あまりよく知らない人と目を合わせる
  20. 仲間の前で報告をする
  21. 誰かを誘おうとする
  22. 店に品物を返品する
  23. パーティーを主催する
  24. 強引なセールスマンの誘いに抵抗する

LSASはそれぞれの項目に対し、恐怖感や不安感をどれほど感じるか、さらに回避行動をどれだけとっているかを採点します。具体的には以下の基準で採点します。

恐怖感/不安感

  1. まったく感じない
  2. 少しは感じる
  3. はっきりと感じる
  4. 非常に強く感じる

回避

  1. まったく回避しない
  2. 回避する(確率1/3以下)
  3. 回避する(確率1/2程度)
  4. 回避する(確率2/3以上または100%)

1項目につき最大6点。これが24項目あるので、最大144点になりますが、社交不安症の評価の目安は以下の通りです。

30点境界域
50~70点中等度の社交不安症
70~90点さらに症状が著しい。通常、仕事や社交面に支障があらわれる
90点以上重度の社交不安症。通常、仕事や社会活動に大きな支障があらわれる

発症から確定診断まで

初めての過緊張(発症)

社交不安症の人には物心ついた時からこの症状に悩んでいる方もいれば、大人になってから突然発症する人もいます。私は後者の「突然発症した」タイプで、それまではむしろ自分から手を挙げてグイグイ人前に出ていくタイプでした。

2011年、勤務先の研修で自分の強みや弱み、今後のキャリアプランについて発表する機会がありました。3日間にもわたる合宿形式の研修を通して出てきた答えは「わからない」。そう、答えが出せなかったのです。それでもプレゼン発表の時はやって来ます。でも、あまり緊張していません。「3日も悩んだのに、自分のキャリアプラン描けませんでした!」と少し面白おかしく笑いを取ってやろう位に考えていたと思います。

PowerPointをスクリーンに表示して、皆の前に立ちました。周囲の視線が集まります。奥ではビデオカメラも回っていました。少し大きく息を吸い込み「みなさんこんにちは」と喋り始めると、すぐに異変に気付いたのです。あれ?もしかして緊張してる?

声が震えていました。実際そのように声が震えていたのかはわかりませんが、少なくとも自分には震えているように聞こえました。そして首と頭がガクガク震え始めたのを感じたのです。手足もブルブルしてきます。「濡れた子犬のように小刻みに震えているのを見られるなんて恥ずかしい!」そう思うと顔面が真っ赤になるのを感じました。そうこうしているうちに手に汗がにじみ出てきます。

びっくりして思わず言いました。「あれ?なんか緊張しちゃってる。うまく喋れないので、ちょっと待って下さい。」壇上から一歩下がってこの奇妙な症状がおさまるのを待ったのですが、心臓がバクバクする動悸を感じるだけで、一向に良くなる気配がありません。首が絞められる様な感じで声が出ません。喋りたいのにどうしても声が出ない。まるで限界まで息を吐いて、その状態から喋れと言われているような感じです。

そこから5分間のプレゼン発表は惨憺たるものでした。内容が伴ってない上にスピーチも壊滅状態で、最悪の評価だったのは言うまでもありません。とにかく緊張して震えて赤面している自分が恥ずかしくて、1秒でも早くその場から消え去りたいという思いしかありませんでした。

地獄の様な5分間が過ぎ去り自分の席に戻ると、さっきの緊張はウソのようにスッと消えました。「一体何だったんだ今のは」そう思いながらも、特に深く考える事もなく、いつもの様に同僚とくだらない雑談をしながら帰路についたのでした。

2度目の発症

それからしばらくは平穏な日々が過ぎていきました。なぜならプレゼン発表のように人前で喋る機会が無かったからです。しかし数ヶ月後、2度目の発症に見舞われる事になります。

当時、管理職登用試験にパスしていた私にいよいよそのチャンスが回ってきました。管理職になれば給料1.5倍。退職金も2倍となり人生安泰。そう思って気合いを入れて管理職採用面接のプレゼン資料を作り、いざ発表練習となりました。目の前には直属の上司や、上司の上司、さらには役員などかなり位の高い面々が揃ってました。「失敗しちゃいけない」そう思ったら終わりでした。あの独特の緊張感が襲ってきたのです。

「え、また?なんでこのタイミングで‥‥」単なる一過性の症状だと思っていたのに、再び緊張して体が震え、赤面し、冷や汗をかいてしまいました。プレゼンテーションの講評では「緊張しているのが伝わってくる。何を恐れているのかわからない。」と痛い指摘までもらってしまいます。

すぐに自己分析を始めました。答えは案外簡単に出てきました。どうやら自分は、自分が評価される時、特に目上の人から評価される時に過度に緊張してしまうらしい。でもそんな自己分析、これっぽっちも役に立ちません。どのような対策を打てば良いのか全くわからなかったからです。上司からは「場数だよ」そんなアドバイスも貰いましたが、管理職採用面接のプレゼン練習は何回やっても緊張してうまく喋れませんでした。

そうこうしているうちに、同僚や後輩たちとの打ち合わせの場があり、現時点での作業の進捗状況を報告し始めた時、またもや過緊張の症状が現れたのです。こうなるともうわけが分かりません。ここには自分を評価しようとする上司も役員もいません。なのにこの震え、赤面、そして喉から出てこない声‥‥。

緊張しそうなシーンから逃げ回る日々

こうなると人間、自己防御の仕組みが働くのか、このような緊張しそうなシーン、具体的には何か人前で喋るシーンを避けるようになります。「予期不安」というらしいですが、不安になる前に「不安になるかも」と思った時点でもうダメです。会議では発言しない、質問もしない、一切手を挙げない。映画「攻殻機動隊イノセンス」に出てくる言葉「孤独に歩め。悪をなさず、求めるところは少なく。林の中の象のように。」をまさに地で行くようになりました。

うつ病発症

そんな悩みを知ってか知らずか、上司は管理職採用面接を控えて、私の顔を売るため、そして場数を踏むために、管理職会議に参加するように誘ってきました。断る事もできずに参加すると、ただでさえ緘黙しがちになっているのに、ますます口を開かなくなりました。「会議で発言しない奴は今すぐ退場しろ」といつも思っていたのに、今の自分は会議で全く発言しないダメ人間状態。もう毎日が辛くて辛くてしんどかったです。

ある月曜日の朝、目覚まし時計で目を覚ますとすぐに、胸が締め付けられそうな感覚が襲ってきました。「今日は休もう」最初はそんな感じだったと思います。しかし日に日に休む頻度が増え、なにやらただごとではない様相を呈してきました。幸いにも家族が理解ある人で「病院に行ってきたら?」とススメてくれ、重い足をひきずって病院にたどり着きました。

うつ病

診断結果は「中程度から重度の抑うつ状態」でした。この時はまだ社交不安症の診断は下っておらず、主訴のうつ状態に対する治療や投薬が行われていました。

休職と復職を繰り返し、管理職採用の話はいつしか立ち消え、管理職はおろか、会社そのものをいつクビになってもおかしくない状態が約4年ほど継続し、不安で不安で仕方がなかった事をなんとなく覚えています。

悪化する社交不安症

投薬やカウンセリング、認知行動療法などの効果でうつ症状はかなり改善し、完全社会復帰まで目前と差し迫った時、社交不安症の症状が酷くなってきました。人前で喋ると緊張してしまうのは以前と変わりませんが、今回ばかりは様子が違っていました。緊張してしまったのは床屋さんだったのです。

鏡越しに見られている感になんとなく気まずさを覚えた直後、首と頭がガクガク震え始めました。「ヤバイ」そう思うと同時に顔が火照って赤面状態に。心の中で「落ち着け、落ち着け、ここは緊張するシーンじゃないぞ」と自分自身を説得し続けるも、首と頭の震えは止まりません。ハサミで髪の毛切ってもらってるのにプルプル震えているのですから、さぞかし切り辛かった事でしょう。その申し訳無いという気持ちがさらに緊張感に拍車をかけてくるのです。

社交不安症の症状は次々に襲ってきます。床屋で緊張してしまった次の日、スマホを機種変更するために携帯ショップに行った時でした。契約書にサインしてと言われて書き始めると、手が激しく震えて全く字が書けません。何度かトライしてみましたが、自分の名前が書けないのです。これはダメだと思って、店員さんには「すいません、今手が震えちゃって書けないので、しばらく待ってもらえますか?」と言うと、案外そういうお客さん多いのか不思議な顔をするでもなく「あ、わかりました。書き終わったら教えて下さい」と言ってその場を離れていきました。

帰宅後「さすがにこれはおかしい、人前で緊張するってレベルじゃないぞ」とインターネット検索しました。「あがり症」「手が震える」などのキーワードで検索したと思います。すると赤面恐怖症発汗恐怖症対人恐怖症書痙場面恐怖症など、すぐに思い当たる症状がヒットしました。

「なんだこれ、まさに今の自分と同じじゃないか‥‥社交不安症?」

確定診断

4年もの長きにわたって診察してもらっていたやさしい精神科医でしたが、「社交不安症の症状が出てます」と訴えると「なるほどそれか、なぜ早く言わなかった」と軽く怒られてしまいました。確かに「人前が苦手」という事は話していなかったですし、意図的に隠していた感も否めません。

カウンセラー

すぐさまM.I.N.I.(Mini-International Neuropsychiatric Interview:簡易構造化面接法)による社交不安症のチェックが行われ、4つ全てがYESであること、

  • 人から見られたり、注目を浴びたりすることに不安や恐怖を感じる
  • その不安や恐怖は、自分でも過剰であり不合理だと思う
  • その状況に対し、避けたり我慢したりしなければならないほどの恐怖を感じる
  • その恐怖により著しい苦痛を感じ、日常生活に支障をきたしている

続いてLSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale:リーボビッツ社交不安症評価尺度)によって「中程度から重度(72点)の社交不安症である」との確定診断が下りました。

完治までの道のりSTEP1 薬物療法・投薬

1ヶ月目~

診断が下ったその日のうちに出されたのがSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のひとつ「レクサプロ」と、しばしばBZDと略されるベンゾジアゼピン系の抗不安薬(緩和精神安定薬)のひとつ「レキソタン」でした。

レクサプロ・レキソタン

SSRIは抗うつ剤として開発された薬で現在4種類のSSRIが発売されています。その中でも「レクサプロ」は2011年に発売された最も新しいSSRIで、社交不安症の薬物療法としてはファーストチョイスの薬剤となっています。

有効成分商品名発売年
フルボキサミンルボックス
デプロメール
1995年
パロキセチンパキシル2000年
セルトラリンジェイゾロフト2006年
エスシタロプラムレクサプロ2011年

レキソタンは不安や緊張を緩和する薬で、私の場合は会議やプレゼンテーション等緊張しそうな場面の30分~60分前に頓服として飲む薬として処方されました。

SSRIが社交不安症に劇的に効くらしいという話をインターネット上で頻繁に目にしていましたし、この時は「あぁこれで私もようやくこの苦しみから解放される‥‥」と安堵したのを覚えています。でもそんなに劇的に症状が緩和されるわけでは無い事をすぐに知ることになりますが、それでもレクサプロとレキソタンの存在はこの頃の私にとっては心の拠り所になっていた感があります。

完治までの道のりSTEP2 社交不安症を知る

2ヶ月目

うつ病と同じように寛解・再発を繰り返して長期間化する事を危惧して「少し真剣に病気と向き合った方が良い」という「アドバイス」‥‥どちらかと言えば「指導」を家族から受け、正面からこの病気と向き合ってみることにしました。

いくつかインターネットで記事を読み漁りましたが、情報量が全くもって足りてないと感じたので、いくつか書籍を購入して読みました。

社交不安症は従来「社会不安障害」「対人恐怖症」と呼ばれていた心の病です。人前に出るのが怖く、社交的な場で他人と交流するときにたいへん緊張します。他人がいる場にいるだけで苦痛に感じるほどになり、外に出ることができず、社会生活にも日常生活にも支障をきたしてきます。周囲からは「あがり症は性格の問題」などと、苦痛が理解されない傾向がありますが、治療をすれば治る病気なのです。本書では、複雑な心の背景をわかりやすく図解。社交不安症を理解するための基礎知識をはじめ、改良され効果が高まった認知行動療法、さらに今話題になっているマインドフルネスについても紹介。不安に負けない心を育てるために役立つ一冊。
Amazonで購入 楽天で購入
Amazonで購入 楽天で購入
極度の恥ずかしがり屋か、病気か?不安から日常生活に支障をきたすこの病気のしくみと治療法を劇的な治療効果をあげる専門医が解説。大丈夫。何歳からでも治せる!自分の性格が弱いせいだ...。そう思ってあきらめていないか?第一人者を監修に、症状の特徴・原因、発症のタイミングから治療のポイント、薬の知識まで図解で徹底解説。まずは正しく知ることから始めよう。
Amazonで購入 楽天で購入
Amazonで購入 楽天で購入
あがり症、対人恐怖、赤面症、極度の引っ込み思案......など、人付き合いの面で強い恐怖心や不安を抱き、それが当人の社会生活に支障を及ぼしている状態のことを「社交不安障害」と呼びます。本書では、まずこの障害の理解や治療法をやさしく解説し、そして対人関係療法の視点から、この障害とどう向き合い、人間的に成長していくかの指針を示します。
Amazonで購入 楽天で購入
Amazonで購入 楽天で購入

完治までの道のりSTEP3 運動

3ヶ月目~

次に取り組んだのは運動です。これまで何度かフィットネスクラブやスイミングクラブに行った事はあったものの、なかなか長続きしない上に、お金もかかります。そこで早朝にジョギングをすることにしました。これはある意味「自己暗示」に近いのですが、3日坊主にならないように、以下の書籍を読んで「運動の重要性」を頭に叩き込んでから始めました。

運動すると気分がスッキリすることは誰でも知っています。けれどもなぜそうなるのかわかっている人はほとんどいません。本書は「運動と脳」の関係に神経科学の視点から初めてしっかりとメスを入れ、運動するとなぜ学習能力が上がるのか──のみならず、ストレス、不安、うつ、ADHD、依存症、ホルモン変化、加齢といった人間の生活・人生全般に影響を及ぼすのか、運動がいかに脳を鍛え、頭の働きを取り戻し、気持ちを上げるかを解き明かします。
Amazonで購入 楽天で購入
Amazonで購入 楽天で購入

この本はうつ病に悩まされている時に購入したものですが、よく見てみると第4章をまるまる使って、運動が不安障害にもたらす効果について語っていました。この本を読むと不思議と「運動したい」と思うようになります。是非読んでみて下さい。

運動の効果はただちに目に見えるものではありませんが、今こうして社交不安症から解放された事を考えれば、間違いなく効果はあったと言えると思います。ちなみに、この時始めたジョギングは今でも続けています。

完治までの道のりSTEP4 自助会

7~8ヶ月目

私にとって社交不安症完治へ向けてターニングポイントとなったのが自助会です。自助会とは同じ社交不安症を持った患者もしくは元患者が集まって悩みを告白したり意見交換したりして、互いに病気克服のためのヒントを見出そうとする場です。

地獄の自己紹介タイム

そもそも人前で喋ったり、人が集まる場所に行くのが苦手な社交不安症の人が自助会なんていう場に集えるのだろうか?と疑問に思いましたが、勇気を振り絞って行ってみると20人近くの人で賑わっていました。いや、最初は賑わってはいなかったです。みな静かに座ってました。自助会の主催者(この人も社交不安症)が自己紹介すると、「では順番に時計回りに自己紹介していきましょう」と言うではありませんか。「失敗した!」とその時は思いました。自己紹介なんて一番苦手なシーンで、緊張するに決まってます。いくらレキソタンを若干OD(オーバードース)してきているとはいえ、見知らぬ人たちの前での自己紹介は辛い‥‥

それぞれが名前と病歴、この自助会に対する期待などを話していきます。「お前らスラスラ自己紹介してるじゃねぇか。どこが社交不安症なんだよ」と思わずにはいられません。順番が近づいてきて、私の隣の人の番となりました。やはり淀みなく自己紹介している。「みんな嘘つき」そう思いながら、今まさに自己紹介中の隣の人の手元にふと目をやると、めっちゃ震えてました。ハンカチをギュっと握りしめてなんとか手の震えを抑えようとしているのがわかります。思わず顔を見上げました。震えているのは手だけではありません。体中震わせて必死になって自己紹介していたのです。

社交不安症に悩んでいるのは私だけじゃない」「こんなに震えていても案外遠くから見たらわからないものなんだ」と思うと、私の胸のつかえが少し取れた気がしました。その後巡ってきた私の自己紹介では、やはり緊張してしまい、震え、赤面もろもろ症状が出てしまいましたが、不思議と「恥ずかしい」という気持ちはあまり感じませんでした。

衝撃的なアドバイス

その後、5~6名の小グループに分かれて、もう少し詳しい自己紹介と悩みなどを打ち明け合う事になりました。各グループには数名の社交不安症の「先輩」がついて、様々なアドバイスやコメントをしてくれます。決して上から目線のアドバイスではなく、時には参加者が涙ぐむほどの、本当に優しいアドバイスでした。

私が勤め先でプレゼンテーションする機会が多くその都度緊張して失敗を繰り返している事を話すと、仕事が出来そうな美人キャリアウーマン風の先輩がこんな事言ってくれました。

  • その発表で「良い評価を得てやろう」と考えてはいないか?もしそうならば緊張してしまうのは避けられない。
  • そうではなく、「聞き手のために何かしてあげよう」「このプレゼンテーションは相手の為にやっているのだ」と考えると不思議と緊張感は抜けていく。

この時、私は衝撃を受けました。過去に全く同じ事を言っていた人がいたからです。まだ社交不安症の確定診断を受ける前、とある発表会に参加した際にかなり上手なプレゼンテーションをした人に出会いました。プレゼンテーション後に、たまたま個別にお話しする機会に恵まれたので「プレゼンテーションお見事でした。どうやったらあなたのように堂々とプレゼンする事ができるんですか?」と聞いてみると、「こう見えても昔は緊張しぃでプレゼン出来ない人だったんですよ」と言うではないですか。「今は全然そんな風には見えないですけど」と言うと、「自分の為じゃなくて相手の為にプレゼンテーションするんだって思うようにしてから緊張しなくなりました」と言っていたのです。

その時は「へぇそんなもんか」くらいにしか思っておらず、半分聞き流した感じでしたが、これで2回目。「もしかしたらこの話、意外と真実に近いのではないか」と真面目に考えみる事にしたのです。

完治までの道のりSTEP5 スポーツボランティア活動という名の暴露療法

8~12ヶ月目

見返りを求めず誰かのために何かする。これはボランティア精神そのものです。「そうかボランティアか!」と閃いた私は、すぐさまサッカーJリーグの某チームのボランティアに申し込みました。

スポーツボランティア

ここには老若男女、多様なバックグランドを持った人が集まっています。仕事上の立場なんて関係ありません。誰でも一介の新人ボランティアとしてリスタートです。それがとても気を楽にさせてくれました。相手からの評価を気にしなくて良いのです。たとえ失敗したとしても、たまには怒られたりもしますが、あまり気になりません。「だって新人なんだから失敗のひとつやふたつ位するさ」とひらきなおれたからです。

そして意外な事にスポーツボランティアは人との接触時間があまりありません。正確に言えば、数は膨大ですが、一人あたりせいぜい1~2秒程度です。チケットもぎりながら「こんにちは」「いらっしゃいませ」「ご来場ありがとうございます」。緊張する前に相手はもうその場からいなくなってしまいます。たまに声かけられて「○○に行きたいんだけどどう行くの?」とか質問されたりしましたが、社交不安症の先輩がアドバイスしていた通り、まさに話し相手の役に立つ事を念頭に道順などを教えている時は不思議と緊張しませんでした。

1~2秒程度の超短時間で繰り返される人との接触。そしてたまに発生する15秒程度の質問とその回答のやりとり。スポーツボランティアを始めた時は意識していなかったですが、後から振り返ってみると、実はこれ暴露療法そのものだという事に気付きました。

最初の頃はレキソタンを服用して臨んでいたスポーツボランティアですが、そのうちレキソタンを飲まなくても平気になりました。また、当初は無理だった大声を出して「みなさん2列でお願いします」などのような観客を誘導する行為も出来るようになりました。大声を出した瞬間は皆の視線がこちらに向かってくるので緊張しそうになりますが、すぐに観客の視線は他に向かうので大丈夫です。

こんな事でも過緊張せずに喋れるようになった!

スポーツボランティアを始めてからは体調は急激に回復し、それまで併用して飲んでいた薬も徐々に減薬して、SSRI(レクサプロ)やBZD(レキソタン)等の薬は今では服用していません。

そしてそれまで避けて逃げ回っていた以下のような事がなんの苦痛もなく出来るようになったのです。

  • 電話電話をかける
    コールセンター等知らない人が出る電話でも緊張する事が無くなりました。緊張するのが見られるのが嫌で、電話する時は誰もいないところにわざわざ移動していたのに、今ではどこでも電話出来るようになりました。
  • 床屋で髪を切る
    床屋で緊張して頭や首が震える症状は社交不安症がかなり悪化してから出てきた症状ですが、今ではこのような震えに襲われる事はなくなりました。
  • 飲み会に参加する
    スポーツボランティア同士の飲み会や、勤務先の飲み会にも積極的に参加するようになり、人間関係が良好になったように感じます。「飲まなきゃ良くならない人間関係なんてクソくらえ」とずっと思っていましたが、飲みの席で思わぬプライベートの話で盛り上がって一気に親近感沸いたり、「次はここに遊びにいこう」なんてのが決まったりして、こういう場に参加するのはそれなりに意味がある事なんだなと最近は思うようになりました。
  • プレゼンテーションプレゼンテーションをする
    プレゼン出来るようになりました!上司はもちろん周囲の先輩や同僚、後輩にも「私はプレゼンテーションが苦手」と伝えていて、周囲は腫れ物に触るかのような、どことなくギクシャクした感じの配慮をしてくれていたのですが、「次のこの案件のプレゼン担当は‥‥」と上司が言ってきた時も「はい、私やります!」と自信も持って手を挙げる事が出来ました。プレゼンテーションを実際にやってみると、確かにある程度の緊張はするものの、社交不安症レベルの症状は出ることなく練習通りのプレゼンが出来て「先輩、苦手とか言ってたけど、めちゃくちゃプレゼン上手じゃないですか」と後輩君から褒められちゃいました。
  • プレゼンテーションや講義の後に質問をする
    他人のプレゼンテーションや講義の後いろいろ質問したくなるのですが、これまでずっと耐えてました。しかし今では遠慮する事はありません。「なにか質問ありますか?」と質問タイムに突入すれば、スッと手をあげてその場で疑問解消です。
  • 新しいスマホを契約する
    社交不安症で病院に駆け込むきっかけになったスマホの契約ですが、あれからまた別のスマホを契約する事になって携帯ショップに行きました。沢山書類にサインしましたが、手が震えて字が書けない「書痙」は発症しませんでした。
  • 他人の仕事のヘルプに入る
    「何かお手伝いしましょうか?」どうしてもこれが言えなかったのですが、今では積極的に他人のヘルプに回るようになりました。もちろん感謝されますし、こうした姿勢が評価されてみんなハッピーです。
  • 会議会議を主催する・ファシリテートする
    何か問題に遭遇したら必要な人員を一同に集めて短時間で議論して解決策を導く。こうした会議を開催する事が出来ず、なんでも後手後手に回っていましたが、今では「よしミーティングしよう」とフットワークが軽くなり、仕事のスピードも大幅に向上しました。
  • テレビのインタビューを受ける
    これ凄くないですか?先日とあるボランティア活動していたらNHKの取材班が来ていて、「ちょっとインタビューしても良いですか?」と聞かれました。昔ならもちろん断っていたでしょうけど、「あ、いいですよ」と即答。巨大なカメラを向けられ、カメラの脇にいるディレクターさんからいろいろ質問されましたが、しっかりと受け答えする事が出来ました。カメラの向こうに何千万人、もしかしたら1億人以上の視聴者がいると思うと全く緊張しないといったらウソになりますが、声が出なくなったり、顔が赤くなったりする事はありませんでした。医者から「完治したよ」と言われたわけではありませんが、このテレビインタビューに答えられた事は非常に自信となり、このブログ記事を書くきっかけにもなりました。

社交不安症に関する疑問

社交不安症は親からの遺伝なのか?

社交不安症の原因はまだ不明ですが、親からの遺伝的要素はほとんど無いというのが現時点での見解です。

社交不安症は自力で治す事が出来るのか?

これは私個人の見解ですが、自力で治すのは難しいと思います。きちんと病院に行って、医師に薬剤を処方してもらい、その上である程度周囲の理解を得たうえで、必要な各種療法を受けたり、様々な行動を起こしたりする事が大切なのではないでしょうか。

私の場合は「読書」「運動」「自助会」「スポーツボランティア」と社交不安症からの回復状況に応じて様々な行動をおこしていますが、これらは投薬された薬(レクサプロ・レキソタン)の力がなければ多分始められなかったと思います。そしてそこには「早朝ジョギングする」と決めた翌日にジョギングシューズをプレゼントしてくれた家族、孤独感から解放しアドバイスをくれた自助会の参加者たち、暴露療法の場を提供してくれたスポーツボランティアのメンバーたち、そしてSSRI(レクサプロ)の副作用でウトウトしてしまっている私を温かい目で見守ってくれた職場の同僚や上司など、実に多くの方々の協力がありました。

独り自力で100%無理とは言いませんが、きっとそれは結局は遠回りかつ茨の道だと思います。ましてや休職・離職してしばらく経過し、社会復帰に「慣れ」が必要な方は、公的支援機関のひとつ「就労移行支援事業所」の利用も視野に入れつつ、出来るだけ多くの周囲の協力を取り付けて「皆で治す」「チームで治す」くらいの気持ちで治療に努めていけば、社交不安症完治への近道になるかもしれません。

アットジーピー【atGP】アットジーピー【atGP】
Author: (株)ゼネラルパートナーズ
障がい者(障害者)求人情報サイトのアットジーピー。障害者の雇用支援実績、求人数No.1。転職・就職活動を障害者専門のキャリアアドバイザーがサポートします。
ラルゴ高田馬場ラルゴ高田馬場
Author: (株)アスリートプランニング
ラルゴ高田馬場は、人材紹介事業で圧倒的なサポート力のアスリートプランニングのノウハウと障がい者専門の福祉施設ラルゴ神楽坂のノウハウを融合した就職・転職支援総合サービスです。障がい者のための就職、転職活動をとことんサポートさせて頂きます。不安を取り除き、長く活躍できる場をあなたと一緒に見つけていきます。
ニューロワークスニューロワークス
Author: (株)イノベイジ
就職スキルだけでなく脳の健康についても学ぶ、障害者のための就労移行支援です。脳の健康に良い生活習慣を身につけることで能力・スキルを発揮しやすい環境を整え、自分らしく働き続ける事をサポートします。(大塚・横浜)

※ ニューロワークスで行うブレインフィットネスプログラムは医師の診断・治療に代わるものではありません。基本的な脳と体の健康増進プログラムであり、障害自体の治療でない事にご注意下さい。

終わりに

自助会でのエピソードはここに記した内容で皆さんも多少なりとも追体験できると思いますが、「独りじゃないんだ」という安堵感は実際に自助会に足を運んで目の前で体験した方が大きいと思います。

私の場合、自分でインターネットで調べて、自分の身に発現した社交不安症の様々な症状を書きしめた紙切れ1枚を精神科医に渡した事から全ては始まりました(口頭で説明する自信が全く無かったので、事前に手紙をしたためてそれを手渡しました)。無理にとは言いません。少し勇気を出して近くの病院を訪ねてみてはいかがでしょうか?

社交不安症で悩んでいる人はあなただけではありませんよ。

らくとん
作成日 2019年01月25日 23時58分
更新日 2019年05月02日 20時07分
14208文字
Twitter Facebook はてなブックマーク Pocket
■ 関連記事
らくとん倶楽部らくとん倶楽部
Author: らくとん
障がい者雇用をめぐる状況は、現在のところ完全な「売り手市場」にあります。つまり多くの企業や団体が積極的に障がい者採用を 進めており、一部では「障がい者の奪い合い」の様相を示しているほどです。これには2...